令和2年度から基礎控除、給与所得控除、青色申告特別控除の税制改正が適用されることになりました。
- 「基礎控除」の改正
- 「給与所得控除」の改正
- 「青色申告特別控除」の改正
- 損する人?得する人?
早く知りたい場合はこちらから↓
・会社員等の給与所得者の方
・個人事業主や自営業等の青色申告者の方
「基礎控除」の改正

- 改正前の基礎控除
- 改正後の基礎控除
- 改正前後の基礎控除を比較
「基礎控除」とは、
確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の一つに基礎控除があります。基礎控除は、ほかの所得控除のように一定の要件に該当する場合に控除するというものではなく、一律に適用されます。(引用元:国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
もう少し簡単に言うと、まず所得税は毎年の確定申告と年末調整で課税所得を計算して決まります。
『課税所得=収入-15種類の所得控除』
で、計算されるため控除が多ければ多いほど節税になります。
フリーランスや自営業、会社員など関係なく全ての人に適用される控除が「基礎控除」です。
改正前の基礎控除
改正前の所得税の「基礎控除」は所得制限なしの全ての人が一律38万円でした。
改正後の基礎控除
合計所得 | 基礎控除額 |
---|---|
~2,400万円 | 48万円 |
2,400~2,450万円 | 32万円 |
2,450~2,500万円 | 16万円 |
2,500万円~ | 0円 |
改正後の所得税の「基礎控除」は所得制限あり※の48万円~0円になります。
※所得によって控除額が引き下げられること。
改正前後の基礎控除を比較
合計所得 | 改正前の控除額 | 改正後の控除額 | 増減 |
---|---|---|---|
~2,400万円 | 38万円 | 48万円 | +10万円 |
2,400~2,450万円 | 38万円 | 32万円 | -6万円 |
2,450~2,500万円 | 38万円 | 16万円 | -22万円 |
2,500万円 | 38万円 | 0円 | -38万円 |
年間の合計所得が2,400万円以下の方は控除額が10万円アップの48万円になり減税されますが、2,400万円超になると増税になります。
「給与所得控除」の改正

- 改正前の給与所得控除
- 改正後の給与所得控除
- 改正前後の給与所得控除
- 改正後の「所得金額調整控除」対象者
給与所得控除とは、
給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出しますが、この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて変化します。(引用元:国税庁)
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm
簡単に言うと会社員の経費です。給与所得の収入は現金だけでなく、現物支給も収入としてみなされます。しかし、現物支給がそのまま給与所得になるというわけではありません。
なので、個人事業主の経費のように給与所得控除として一定の控除が受けられます。
改正前の給与所得控除
給料等の収入金額 | 給与所得控除 |
---|---|
~180万円 | 収入金額×40万円※ |
180~360万円 | 収入金額×30%+18万円 |
360~660万円 | 収入金額×20%+54万円 |
660~1,000万円 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円~ | 220万円(上限) |
改正前の「給与所得控除」は、所得制限ありの65万円~220万円になります。
改正後の給与所得控除
給与等の収入金額 | 給与所得控除 |
---|---|
~180万円 | 収入金額×40%-10万円※ |
180~360万円 | 収入金額×30%+8万円 |
360~660万円 | 収入金額×20%+44万円 |
660~850万円 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円~ | 195万円(上限) |
改正後の「給与所得控除」は所得制限ありの55万円~195万円になります。
改正前後の給与所得控除を比較
給与等の収入金額 | 改正前の控除額 | 改正後の控除額 | 増減 |
---|---|---|---|
~180万円 | 収入金額×40%※1 | 収入金額×40%-10万円※2 | -10万円 |
180~360万円 | 収入金額×30%+18万円 | 収入金額×30%+8万円 | -10万円 |
360~660万円 | 収入金額×20%+54万円 | 収入金額×20%+44万円 | -10万円 |
660~850万円 | 収入金額×10%+120万円 | 収入金額×10%+110万円 | -10万円 |
850~1,000万円 | 収入金額×10%+120万円 | 195万円(上限) | -10~-25万円 |
1,000万円~ | 220万円(上限) | 195万円(上限) | -25万円 |
※2:55万円に満たない場合には、55万円。
給与等の収入金額が850万円以下の人は給与所得控除額が税制改正前の-10万円になり、先ほどの基礎控除額+10万円と合わせると±0になります。
改正後の「所得金額調整控除」対象者
先ほどの通り給与等の収入金額が850万円以上の方は増税になりました。しかし、増税の負担を緩和するために例外も設けられています。
「所得金額調整控除」の対象者
- 特別障害者に該当する人
- 23歳未満の扶養親族がいる人
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
「青色申告特別控除」の改正

- 改正前の青色申告特別控除
- 改正後の青色申告特別控除
- 改正前後の青色申告特別控除
「青色申告特別控除」とは、個人事業主や自営業の方が確定申告で青色申告をする際の控除額のことです。
改正前の青色申告特別控除
「青色申告特別控除」には、65万円控除と10万円控除があります。
65万円控除
- 不動産取得または、事業所得、山林所得を生ずべき事業
- 複式簿記により記帳
- 貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、提出
10万円控除
- 65万円控除の要件を満たせない方
改正後の青色申告特別控除
65万円控除
- 不動産取得または、事業所得、山林所得を生ずべき事業
- 複式簿記により記帳
- 貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、提出
- 仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存する←NEW
- 確定申告書及び青色申告決算書をe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して提出←NEW
55万円控除
- 不動産取得または、事業所得、山林所得を生ずべき事業
- 複式簿記により記帳
- 貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、提出
10万円控除
- 55万円控除の要件を満たせない方
改正前後の青色申告特別控除
新65万円控除 | 改正前の 青色申告特別控除 | 改正後の 青色申告特別控除 | 増減 |
---|---|---|---|
〇 | -65万円 | -65万円 | ±0 |
× | -65万円 | -55万円 | -10万円 |
改正前と同じように65万円控除を受けたい場合は、電子帳簿保存をするか確定申告をe-Taxで行うかどちらかが必須になります。
改正前の要件のみの場合は55万円控除になり、控除額は改正前と比べて-10万円となります。
損する人?得する人?

- 会社員等の給与所得者
- 個人事業主や自営業等
- 得する人は一部の青色申告者のみ
・「基礎控除額」は合計所得が2,400万円以下の人が+10万円で減税
・「基礎控除額」は合計所得が2,400万円以上の人が-69~-38万円で増税
・「給与所得控除額」は給与等の収入金額が850万円以下の人が-10万円で増税
・「給与所得控除額」は給与等の収入金額が850万円以上の人が-10~-25万円で増税
・「青色申告特別控除額」は要件を1点クリアできれば±0
・「青色申告特別控除額」は要件を1点クリアできなければ-10万円で増税
上記をまとめると…
会社員等の給与所得者
合計収入金額 | 基礎控除額 | 給与所得控除 | 増減 |
---|---|---|---|
~850万円 | +10万円 | -10万円 | ±0 |
850~2,400万円 | +10万円 | ~-25万円 | 増税 |
2,400万円~ | -6~-38万円 | -25万円 | 増税 |
・合計収入金額が850万円以下の人は、「基礎控除額」と「給与所得控除」の増減で±0
・合計収入金額が850万円以上の人は、「基礎控除額」<「給与所得控除」になり増税
個人事業主や自営業等の青色申告者
合計収入金額 | 新65万円控除 | 基礎控除額 | 青色申告特別控除 | 増減 |
---|---|---|---|---|
~2,400万円 | 〇 | +10万円 | -65万円(±0) | 減税 |
~2,400万円 | × | +10万円 | -55万円(-10万円) | ±0 |
2,400万円~ | 〇 | -6~-38万円 | -65万円(±0) | 増税 |
2,400万円~ | × | -6~-38万円 | -55万円(-10万円) | 増税 |
個人事業主や自営業等の青色申告者は「給与所得控除」が関係ありません。
・合計収入金額が2,400万円以下で新たな「青色申告特別控除」の要件を満たせる人は「基礎控除額」+10万円で減税
・合計収入金額が2,400万円以下で新たな「青色申告特別控除」の要件を満たせない人は、「基礎控除額」と「青色申告特別控除」の増減で±0
得する人は一部の「青色申告者」のみ
多くの人が会社員等の給与所得者で合計収入金額が850万円以下の方だと思います。その場合は「基礎控除額」と「給与所得控除」の増減で±0になるので、今回の税制改正で税額が変わることはありません。
得する人
・個人事業主や自営業等の青色申告者の新65万円控除を受けられる人
損する人
・会社員等の給与所得者で合計収入金額が850万円以上の人
・個人事業主や自営業等の青色申告者の合計所得が2,400万円以上の人
今回の税制改正で減税になり得をするのは、個人事業主や自営業等の青色申告者の新65万円控除を受けられる人のみが「基礎控除額」の+10万円の恩恵を受けられます。
逆に損をするのは、会社員等の給与所得者で合計収入金額が850万円以上の方と個人事業主や自営業等の青色申告者の合計所得が2,400万円以上の方です。
青色申告者は税制改正後の新たな「青色申告特別控除」の要件を満たせるようにしましょう。
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